日本オイルポンプが十数年振りの新製品として開発した「ボルテックス C」の試作品。ポンプとサイクロンフィルタを一体化させた斬新な構造が特徴だ。

 右の写真は、日本オイルポンプ(本社埼玉県熊谷市)が2011年に開発した工作機械用クーラントポンプの試作品のカットモデルだ。顧客の要望に忠実に応えつつ、マンネリ化した設計現場を見直し、本当の顧客志向を追求して省スペース・省エネルギ化を果たした同社の自信作である。

 同社のように産業機器のニッチ市場で安定した顧客を抱える中堅・中小メーカーは、既存製品をベースにしながら、顧客の細かな要求に応じてカスタマイズする「御用聞き設計」をウリにするところが多い。しかし、「顧客志向」のように見えるそうした設計が、必ずしも顧客のためになっているとは限らない。実は、そこには幾つもの落とし穴がある。右のポンプはそんな落とし穴から脱却すべく開発された新製品なのだ。

 では、真の顧客志向設計の在り方とは何か、顧客の要求への対応と効率的な設計を両立させる仕組みとは何か。産業機器メーカー2社の事例から探ってみよう。

〔以下、日経ものづくり2012年10月号に掲載〕