第1部<動向編>
リーダー/ライターが1人に1台
家電や自動車などに波及へ
NFC搭載スマートフォン普及で、リーダー/ライター機能搭載の機器を全員が持つことになる。この結果、各種機器にタグが搭載されてネットワークと関わりを持つようになる。新しい家電の登場など、エレクトロニクス業界が大きく変わりそうだ。
近接無線通信技術「NFC(near field communication)」は、日本の「おサイフケータイ」と大差ないもの──。もし、そう考えているなら、それは間違いだ。スマートフォンやタブレット端末などの携帯端末がリーダー/ライター(R/W)機能を備えるようになるからだ。
これにより、安価なNFCタグを積極的に活用できる。この結果、あらゆる場所とモノがインターネット・サービスとつながりを持つようになる。ネットワーク接続機能を持たない白物家電やヘルスケア機器でも、スマートフォンを通じてインターネットに接続し、多様なクラウド・サービスと連携を始める。
これまでのFeliCa対応の携帯電話機では、クレジットカードや電子マネー・カードといったICカードとして振る舞うだけの存在だった。R/W機能は、POS端末のような決済端末に搭載されており、R/Wが「主」で携帯電話機が「従」という関係だった。利用できるサービスや機能は、POS端末などのR/W側に組み込まれたアプリケーション・ソフトウエア(以下、アプリ)に依存していた。例えば、ある特定のWebページのURL情報を携帯電話機のWebブラウザーに送信する場合、R/W機から携帯電話機のFeliCaのメモリに対してそのWebページのURLを書き込む必要があった。
R/W機能がスマートフォンに搭載されることで、この関係が逆転する。R/Wはスマートフォン側にあるので、Webページへの誘導であればNFCタグにURLを書き込んでおくだけで済む。しかもスマートフォンには、技術者が自由に開発可能なアプリ実行環境があり、移動通信や無線LANの機能が組み込まれている。そのため、タグ内の情報とスマートフォン、インターネットのサーバーを縦横無尽に使ったサービスを簡易に開発できる。
例えば、NFCタグから読み取ったURLから得たWebアプリと、スマートフォンのGPSから得た位置情報などを組み合わせたアプリを作るといったことが、いとも簡単にできてしまう。特定のサービス事業者がアプリを作っていた環境とは、比べものにならない柔軟さである。
第2部<実例編>
始まったNFCタグの活用
機能拡張やネット連携に威力
NFCのタグがエレクトロニクス業界を変える──。白物家電やヘルスケア機器などで利用されるなど、その萌芽は既に出始めている。単純タグとアクティブ・タグを巧みに利用した四つの先行事例を解説する。
第3部<課題編>
市場が未成熟でつながらない
技術と運用での対策が急務
新しい技術の普及が始まるとトラブルは付きもの。NFCも例外ではなく、既に“つながらない”可能性が取り沙汰されている。問題解決に向けて、認証試験プログラムの拡充などが始まった。