容量が必要な用途には電解コンデンサしかない──。こうした従来からの図式が崩れようとしている。キッカケは、フィルム・コンデンサのハイブリッド車への搭載である。ハイブリッド車向けに特性とコスト競争力を高めたことで、再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電)のパワー・コンディショナや産業機器のインバータ部への搭載が視野に入ってきた。
「累計500万台分を出荷し、これまでのところ不良ゼロだ」(パナソニック デバイス社 開発統括センター キャパシタ第3チーム チームリーダーの竹岡宏樹氏)──。
ここ数年、ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)向けに急速に出荷数を伸ばしている電子部品がある。それは、コンデンサの一種のフィルム・コンデンサだ。HEV/EV向けで約85%のシェアを握るとするパナソニックは、2003年9月に発売された2代目「プリウス」からHEV向けのフィルム・コンデンサの供給を開始し、わずか10年足らずで累計500万個以上を生産するまで事業を拡大している。
フィルム・コンデンサ・メーカーにとっては、2代目プリウスによって「突然、巨大なマーケットが現れた」(指月電機製作所 執行役 第一事業本部長の小田敦氏)格好だ。これにより、コストを大きく引き下げる効果を生んだ。2代目プリウス向けフィルム・コンデンサの入札時には、「4社が競合したが、従来に比べて価格があまりにも安いため、我々は付いていけなかった」(国内のある部品メーカー)というほど、価格が下がったのである。
加えて、有望な自動車分野に向けて、パナソニックや指月電機製作所などのコンデンサ・メーカー各社が切磋琢磨したことで、大容量化(小型化)が進み、耐電圧の高さと寿命の長さを生かして他のHEVやEVへの採用が拡大している。