無線LAN(Wi-Fi)と言えば、オフィスや家庭など、構内で使うもの──。そんな常識が変わる可能性が出てきた。従来の2.4GHz帯ではなく、100M~700MHz帯など、はるかに電波が飛びやすい帯域を使う動きが、活発になってきたからだ。無線LANの“革命”とも呼べるこの動きは、移動通信サービスのお株を奪うような、新たな無線サービスの勃興につながる可能性を秘める。

無線LANが変わる

 「無線LAN(Wi-Fi)はとっても便利だけど、使えるのは家やオフィスの中など、限定的でしょ」─。

 スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い、急速に利用シーンが拡大している無線LAN。家庭やオフィスのインターネット利用に、必須の技術になりつつある。ただしこの無線LANも、ひとたびカバー・エリアの外へ出てしまうと、サービスを享受できなくなる。この点が、カバー・エリアが格段に広く、面的なサービスを提供できる携帯電話網との大きな違いだった。

 ところが今、このような常識を覆す動きが、無線通信の業界で活発になってきた。従来の無線LANが利用する2.4GHz帯や5GHz帯と比べて、大幅に電波が飛びやすい100M~700MHz帯の周波数帯を、無線LANに適用するという取り組みが具体的になってきたからだ。

 仮に無線LANが700MHz帯の周波数帯を使えれば、同じ送信出力で伝送距離を3倍以上に伸ばせる。また、電波が回り込みやすくなるため、電波の届かない領域を減らせる。現行の無線LANホットスポットに適用すれば、サービスの適用範囲をグンと広げることができる。街中や商店街など、ビルや店舗を出た後でも、無線サービスがつながり続けるような、携帯電話サービスに近いカバー・エリアを提供できる可能性がある。

『日経エレクトロニクス』2012年9月17日号より一部掲載

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