国内の放送業界が、インターネットの積極活用に舵を切った。背景にあるのは、テレビというメディアの影響力を見直す世界規模の動きだ。ソーシャル・メディアと連携する視聴形態や、スマートフォンなどの携帯端末の普及が追い風になっている。放送業界を軸にテレビの新しい楽しみ方を模索する動向を追う。

SNSと携帯端末を軸に放送通信連携が本格化

 2012年7月20日。日本テレビ放送網は、世界的にも珍しいテレビ番組とインターネットの連携サービスを本格化した。世界最大のSNS「Facebook」とテレビ番組を連動させる「JoinTV」と呼ぶサービスだ。テレビ画面の中で番組内の特定のシーンを選んで共有する仕組みなど、ソーシャル・メディア内の友人と一緒にテレビ番組を楽しむ、いわゆる「ソーシャル視聴」を実現する。

 同じ番組を視聴しているSNS上の友人一覧をテレビ画面に表示したり、番組内の気に入ったシーンにリモコンで「いいね!」するだけで、その詳しい情報をSNS上に投稿したりできる。地上デジタル放送のデータ放送の枠組みと、インターネットのWebサービスを連動させる取り組みである。

 日本テレビが米Facebook社との技術協力を発表したのは、2012年3月初めのこと。その後、関東地方を中心に深夜や午前の情報番組でJoinTVの機能を拡充してきた。今回、日本テレビが取り組んだのは、サービスの規模拡大だ。対象番組は、午後9時から「金曜ロードSHOW!」で放映した人気アニメ映画「サマーウォーズ」。視聴者が多いプライムタイム(午後7~午後11時)の番組を選び、全国ネットに枠を広げてソーシャル視聴の導入に踏み切った。番組視聴中にデータ放送画面でクイズに答えると、友人同士の回答状況をチェックし合える機能なども加えた。

 こうしたサービスが実現した背景には、データ放送の受信とインターネット接続の機能を備えた薄型テレビの普及がある。同社 編成局 メディアデザインセンター長兼メディアマネジメント部長の若井真介氏は、「サマーウォーズでの取り組みは反響が大きかった。2012年末に向けて、さらに盛り上げていく」と手応えを話す。

『日経エレクトロニクス』2012年9月3日号より一部掲載

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