2012年度第1四半期(4~6月期)の決算会見では、基本戦略の転換を迫られるエレクトロニクス業界の苦境と、東日本大震災による打撃からの回復で販売台数を大きく伸ばす自動車業界で明暗が際立った。

想定を超えたテレビ市場の縮小

 「国内で今のようなテレビを造っていても採算は合わない」。2012年8月2日、決算発表の場でシャープ代表取締役社長の奥田隆司氏は顔をこわばらせた。

 シャープは国内工場で生産したテレビを「亀山モデル」とアピールし、高品質なテレビの代名詞として位置付けてきた。国内生産への並々ならぬこだわりを見せてきたシャープが方針を大きく転換せざるを得なくなった最大の理由は、誰も想像すらできなかったほどのテレビ関連市場の冷え込みである。日本市場では2011年のアナログ停波に伴う買い替え特需の反動から2012年の需要が大幅に減少し、海外市場では新興メーカーとの競合が激化した。在庫が積み上がった結果、テレビの販売単価の下落に歯止めがかからなかったのだ。

 同社はテレビ関連事業の不振などから、2011年度通期(2011年4月~2012年3月)に約3760億円の最終赤字を計上している。この苦境から脱することを目指し、2012年3月末に、EMS(電子機器製造サービス)業界で世界最大手の台湾Hon Haiグループ(以下、Hon Hai)と資本提携した。Hon Haiがシャープに9.88%を出資し、シャープの筆頭株主になるとともに、シャープの大型液晶パネル工場である堺工場で生産する液晶パネルの半分をHon Haiが引き取ることで合意していた。

〔以下、日経ものづくり2012年9月号に掲載〕