ようやくLTEが普及期を迎えている移動通信サービス。スマートフォンやM2Mの市場拡大を牽引するように、データ通信速度の向上など、今後も継続的に進化していく。標準化や技術開発の現場では、5~10年先を見据えた準備が本格化し始めた。果たして今後の移動通信サービスは、どのような進化をたどるのだろうか。必要となる要素技術を中心に、移動通信技術の将来像を展望する。

LTEが普及、ポストLTE-Aも

 イタリアとオーストリア、そしてハンガリーに挟まれた欧州の小国、スロベニア──。旧ユーゴスラビアの先進工業地域として栄えたこの地で、2012年6月中旬、世界の移動通信業界の関係者、約250名が集うワークショップが開催された。主催は、第3世代移動通信方式(3G)以降、世界の携帯電話サービスの標準化を主導する「3GPP(The 3rd Generation Partnership Project)」だ。

 議題は「将来の移動通信の姿」。2015年以降、さらには2020年ごろに求められる移動通信のコンセプトについて、世界の主要企業がロードマップを披露しあう初めての場である。

 会場には、主要な移動通信事業者の他、スウェーデンEricsson社やフィンランドNokia社、中国Huawei社、韓国Samsung Electronics社などの通信機器メーカーや、米Qualcomm社、米Intel社などの半導体メーカーまで、そうそうたる顔ぶれが集まった。

 3GPPは現在、次世代移動通信規格「LTE-Advanced」に関する追加規定を盛り込んだ最新仕様「リリース11」の標準化を、ほぼ終えつつある。そのタイミングで、後継仕様の「リリース12」(2014年後半に策定終了予定)、さらにその先の「ポストLTE-Advanced」の構想も含め、各社の想定する2020年に向けた技術課題や、要素技術の候補などを共有化する狙いで開催された。

 ワークショップで主題となったのは、急増する通信トラフィックへの対策である。スマートフォンの登場以来、移動通信のトラフィックは、年に1.6~2.0倍の伸びを示す。2020年には500~1000倍(2010年比)まで高まると予想されている。

 伸びる一方の通信トラフィックにいかに対応するのか。そのために取り組むべき技術課題とは何か──。3GPPの場で将来の議論が始まった今、研究開発の現場でも、2020年に向けた要素技術の洗い出しや研究テーマの選定が本格化しつつある。いよいよ、「2020年のモバイル」を支える通信方式標準化と、要素技術開発が動き出した。

『日経エレクトロニクス』2012年8月20日号より一部掲載

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