日本を代表する半導体メーカー、ルネサス エレクトロニクス。同社は今、かつてない危機に直面している。旧親会社や銀行団から取りあえずの支援を取り付けたが、長引く業績不振からの脱却はいまだに見えていない。ルネサスの危機に、日本の電機業界は何を見るべきなのか。同社の危機とその影響を検証した。

 「ルネサスがなくなるか、部分的にでも残すか。経営者としては、間違いなく残す方を選ぶ」──。

 2012年7月上旬。ルネサス エレクトロニクス 代表取締役社長の赤尾泰氏は、同社の緊急記者会見に集まった報道陣を前にこう漏らした。言葉選びの慎重さで知られる赤尾氏のこの率直な発言は、同社がまぎれもなく存亡の危機に立たされていることを強く印象付けるものだった。

 ルネサスは、旧ルネサス テクノロジと旧NECエレクトロニクスの統合会社として2010年4月に始動した、業界第5位の半導体メーカーである。論理LSIメーカーとしては国内最大の売り上げを誇る。

 だが、始動後のルネサスは不振を極め、売上高は減少の一途をたどっている。手元資金はジリジリと減り、2010年6月末に31.9%だった自己資本比率は2012年6月末には24.4%にまで低下した。

 「我々の会社は危険水域に突入しつつある。このままでは本当に消えてしまいかねない…」。ルネサス社内からもこうした悲鳴が上がり始めた。

 ルネサスの危機は今、電機業界に大きな波紋を広げている。まるで同社の危機が飛び火したかのように、旧親会社で大株主でもあるNECの“経営危機説”が強まった。

『日経エレクトロニクス』2012年8月20日号より一部掲載

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