EVやHEV、PHEVの動力源であるモータ。それを駆動するのがインバータである。モータとインバータはまさに「心臓部」に当たる。それだけに高性能化や小型化が欠かせない。今回は、インバータの最新開発動向を追った。

 今回は、前回に続いてインバータを取り上げる。インバータは、直流(DC)電力を交流(AC)電力に変換する電源回路である。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)では、走行時の動力源であるモータに電力を供給する役割を果たす。インバータを使って、モータに供給する3相交流電力の電圧や周波数をきめ細かく制御することで、走行が滑らかになるだけでなく、エネルギ効率を大幅に高めることが可能になる。

自動車向けに三つの要求

 インバータ自体は、身の回りの電子機器に数多く使われている。代表的なのは、エアコンや洗濯機、冷蔵庫などの白物家電である。こうした白物家電用のインバータと、EV/HEV/PHEV用のインバータ。この2種類のインバータの違いは何なのか。
 回路図上ではまったく違いはない(図)。違いは「EV/HEV/PHEV用のインバータの場合、高い耐環境性と高い耐振動性、大幅な小型化が求められる点にある」(三菱電機 自動車機器事業本部 自動車機器業務部 技術グループ マネージャーの一山秀之氏)という。
 高い耐環境性が求められる理由は、自動車が酷暑地や極寒地といった厳しい環境で使われる可能性があることに加えて、HEVやPHEVの場合はエンジンのすぐそばに配置されることがあるためだ。例えば、-20~+130℃といった極めて広い動作温度範囲に対応する必要がある。さらに、高温から低温へ、そして再び高温へ、というヒート・サイクルにも耐えなければならない。従って、使用する電子部品には、広い動作温度範囲にわたって電気特性が変化しない品種が求められる。

以下、『日経Automotive Technology』2012年9月号に掲載
図 インバータの基本回路
図 インバータの基本回路
入力は直流電力、出力は3相交流である。6個のスイッチング素子を使って回路を構成する。