ルネサス エレクトロニクスは車載LANにインターネットで標準のEthernetの技術を利用するIPコアを開発中だ。「MOST」などに比べて安価にしやすいのが特徴。車内で大容量の映像データなどを伝送するのに使う。

 自動車メーカーの間で、車載LANとして「Ethernet」を採用する機運が高まっている。ドイツBMW社をはじめ、トヨタ自動車や米GM社などが検討し始めた。
 これを受けてルネサス エレクトロニクスは自動車でEthernetを使うためのIP(Intellectual Property)コアの開発を進めている。車載情報端末に向けたSoC(System-on-a-Chip)「R-Carシリーズ」の次世代品などに同コアを搭載し、2013年ごろからサンプル出荷を始める予定だ。2015年ごろの実用化を目指す。

遅延時間は最大2ms

 車載Ethernetの用途として、大容量の動画データの伝送に使うことを想定する。データ伝送速度が100M~1Gビット/秒と速いためである(図)。
 同様の用途を狙った車載LANとして「MOST(Media Oriented Systems Transport)」がある。車載EthernetのMOSTに対する利点は、インターネットで主流の通信技術のため多く量産されている部品を流用しやすく、コストを抑えやすいこと。加えて、IPアドレスを用いて通信網を構築できるので、インターネットとの親和性が高い。技術者が対応しやすくなる。
 ただし、ルネサス エレクトロニクスが自動車に向けて開発しているEthernetは、オフィスや家庭で一般に使うものとは少し異なる。データリンク層に「Ethernet AVB」(IEEE802.1 Audio/Video Bridging)を用いるのが特徴だ。

以下、『日経Automotive Technology』2012年9月号に掲載
図 Ethernetの採用で100M~1Gビット/秒を目指す
縦軸はデータ伝送速度、横軸は普及し始めた時期の目安。ルネサス エレクトロニクスの資料を基に本誌が作成。
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