自動車に通信を利用したサービスを提供するテレマティクスで、これまでの常識を覆す取り組みが始まった。トヨタ自動車とFord Motor社が、車両の制御に使うCAN情報をスマートフォンなどで使える仕組みを構築すると発表した。背景にはスマートフォンの爆発的な普及と、CAN情報が流出し始めたことがある。2社は従来のビジネスモデルを転換、自ら積極的にCAN情報を出すことで新たな仲間作りに励む。
自動車とデータセンターの間で通信しながらサービスを提供するテレマティクス。これまでの壁を打ち破る新しい取り組みが動き出した。自動車メーカーが“門外不出”として自社だけで使ってきた車両情報を、ユーザーに“開放”する試みを打ち出したのだ。
トヨタとFord社は最近、車両の制御に使う情報をスマートフォンやタブレット端末に送信する仕組みを構築すると発表した。車載LANのCAN(Controller Area Network)に流れるパワートレーンやシャシー、ボディの制御情報をスマホなどに送信する。
トヨタは2012年2月、小型スポーツカー「86」のCAN情報を近距離無線通信「Bluetooth」でスマホなどに送る無線機を開発していると発表した(図)。走行中に時々刻々と変わるCAN情報をリアルタイムに送信する。グローブボックス内のUSBソケットに差し込む無線機を2012年内に発売する計画だ。利用できるCAN情報はエンジン回転数やステアリングの舵角、ブレーキペダルのストローク量など十数種類になりそうだ。将来は「86以外の車種にも展開したい」(トヨタ)考えである。
Ford社は2011年にシリコンバレーに拠点を構える新興企業の米Bug Labs社と手を組み、「OpenXC」と呼ぶプラットフォームを構築すると発表。2012年2月にはOpenXCのWebサイトで開発キットを配布した。スマホやタブレット端末向けのアプリケーションで車両のCAN情報を扱いやすくするAPI(Application Programming Interface)を提供する。小型車「Focus」やピックアップトラック「F150」など7車種に現時点で対応。使えるCAN情報はステアリングの舵角やドアの開閉状態など20種類に及ぶ。