自動変速機は、欧州がDCT(Dual Clutch Transmission)、米国がAT(自動変速機)、日本がCVT(無段変速機)と、適材適所ですみ分けるというのがこれまでの常識だった。しかし、日産自動車は北米「Altima」用CVTを刷新し、ホンダも北米「アコード」にCVTの搭載を決定、この常識が崩れ始めた。日本、北米とグローバル展開を進める最新CVT技術を探った。

 ホンダは2012年4月に「ステップワゴン」を部分改良し、それまでJC08モードで13.4km/Lだった燃費を15.0km/Lに引き上げた。全体で12%向上した燃費のうち、アイドリングストップ機構の効果を除いた5%が刷新したCVT(無段変速機)の効果だ(図)。
 実は、このCVTはステップワゴンにだけ搭載されるわけではない。2012年秋に北米で発売する新型「アコード」に搭載し、その後世界展開する戦略部品なのだ。これまで北米アコードは、5速自動変速機(5AT)を使っていたが、それに比べ市街・高速の混合モードで燃費を10%向上させることを狙う。
 北米の中型セダンでは、日産自動車が6月に発売した新型「Altima」でCVTを刷新しており、現在クラストップとなる燃費、市街27/高速38mpg(11.5/16.2km/L)を誇る。ホンダはそれと戦うためCVTを選んだのだ。
 かつてCVTは低速では燃費に優れるが、高速になると不利と言われていた。また、急加速性能も劣るという意見があった。しかし、ホンダ関係者は「Altimaの例で分かるように、米国でCVTの商品力は十分ある」とする。

一気に3タイプの新CVTを開発

 もちろん、新たに投入するCVTでは加速、燃費の両方を改善する。変速比幅は、従来の5.5から6.5に向上。5ATの5程度に比べれば相当広い。ローギアの減速比を落として加速性能を向上させるとともに、ハイギア側をより高くすることで、定常走行時のエンジン回転数を下げられる。
 ホンダは中型車だけでなく、軽自動車用、小型車用CVTの刷新も進めている。最初に投入したのは軽自動車用で、2011年12月発売の「N BOX」で実用化した。このほか、「フィット」など小型車用のCVTも刷新する予定であり、ATの置き換えを進める。

以下、『日経Automotive Technology』2012年9月号に掲載
図 ホンダが開発した中型車用CVT
図 ホンダが開発した中型車用CVT
(a)2.0~2.4Lに対応する。従来のCVTに比べて5%、5速自動変速機に比べて10%燃費を向上させた。(b)同CVTを初めて搭載した「ステップワゴン」。