超小型化、環境対応に向けた技術開発が進む
射出成形技術の応用が広がるにつれて、金型に求められる技術が急速に変化している。本コラム第3回(2012年7月号)までで述べた技術の基本は急に変わるものではないが、射出成形は比較的若い技術とはいえ本格的な普及が始まってから60年経過し、世の中からの要求も変化してきた。それに応える形で、金型も変化しているのである。
その1つは、非常に小さい部品の作製だ。医療機器分野や電子機器分野などで製品の小型化、高機能化、高密度化の傾向はますます強まり、非常に小さな部品が使われるようになっている。そのような部品を造るためには微細な金型が必要であり、金型加工技術においても10nm以内の精度(シングルナノ)の超精密切削領域が実現されている(図)。
もう1つは、材料である樹脂の使用量を削減する技術である。例えばホットランナは、成形時にムダになる部分をなくす技術であり、欧州と比べると日本国内での採用はやや遅れたが、今後本格的な普及期を迎えると考えられる。樹脂に気体を溶解させて金型に射出し成形品内部を発泡させることによって、強度を保ったまま軽量化する微細発泡射出成形も、社会的に高まる環境負荷低減要求に対応する技術の1つといえる。
今回は、射出成形金型の比較的新しいトレンドとして、これらの動向を詳しく見ていく。
〔以下、日経ものづくり2012年8月号に掲載〕
松岡技術研究所
小松技術士事務所