グローバルセンスは、視野を世界へと広げるために必要なさまざまなテーマを、全ての技術者を対象にして紹介するコラムです。「海外工場を切り盛りする 技術者のための経営入門」は、技術者が工場を運営する際に覚えておくべき経営の基礎知識を解説します。

 これまで本連載で述べてきたように、キャッシュフロー経営の基本は、本来の営業活動でお金を生み出し、それを成長のために投資して新たなお金を生み出していくことである。そのためには、確実な利益の確保が必須となる。

 もちろん、技術者はコストダウンや生産性向上の取り組みを通じて利益を創出するために努力を重ねているだろう。しかし、海外工場を切り盛りする技術経営者は、もう一歩踏み込んで経営全般という視点から利益とは何かを考え、利益を出すために現場で何をすべきかについて知っておかなければならない。

売上高と利益の変動

 さて、あなたは自分の会社や工場の売上高が1000万円増えると、利益がいくら増えるかすぐに答えられるだろうか。逆に、売上高が1000万円減ると、利益がいくら減るか把握しているだろうか。実は、急に海外工場の経営を任された技術者の多くはこうした質問に答えられない。

 経営全般を担う者は、売上高と利益の関係を正確に把握していなければならない。販売見通しが狂って大幅に売上高が減少しそうになったときに、それに伴って利益がどう変わるかを見通して素早く対策を打つことが、経営で最も重要なことだからだ。だが、利益の見当が付かなければ適切な対応など取れない。

〔以下、日経ものづくり2012年8月号に掲載〕

高橋功吉(たかはし こうきち)
ジェムコ日本経営 取締役
大手家電メーカーにて、海外経営責任者などの要職を歴任後、ジェムコ日本経営に入社。2007年に執行役員、2011年6月より取締役。上場企業経営トップおよびボードメンバーへの顧問型経営支援をはじめ、グローバル戦略の構築から、製造現場の現場力向上、品質革新など、経営全般にわたって幅広く活躍している。実践に裏打ちされた「分かりやすいコンサルティング」が身上。