東日本大震災によって被害を受けた農地は、膨大な広さに及ぶ。津波による塩害や原子力発電所の事故による放射能汚染など、農地が受けたダメージは深刻だ。

 そんな中、農業復興の手段の1つとして植物工場が注目されている。植物工場の多くは水耕栽培のため、がれき処理や塩害対策が不十分な土地でも活用できる。温度や二酸化炭素濃度などの環境条件を制御することで短期間での栽培が可能なことや、天候などの自然環境の変化に左右されにくく、安定的な生産と雇用が見込めることから、新しい産業としての期待も高い。

 作物の育成状況を把握し、環境を制御するさまざまな機器や設備、安定した品質で大量生産する管理技術など、ものづくり企業が提供できるノウハウは少なくない。植物工場を通して、被災地における農業復興に大きく貢献できるのだ。

ドーム型工場8棟で生産開始

 被災地における植物工場としては、例えば、岩手県陸前高田市の植物工場「グランパファーム陸前高田」がある(図)。同工場では2012年8月、野菜の本格出荷が始まる。

 この植物工場では、光源として太陽光を活用する。エアドーム式のため光を遮る柱がなく、ドームで使うフィルムには93%の光を透過する採光性と耐久性に優れたフッ素樹脂ダブルフィルムを採用して太陽光を最大限に取り込む。

〔以下、日経ものづくり2012年8月号に掲載〕

図●陸前高田市に設立された植物工場
図●陸前高田市に設立された植物工場
植物工場が8棟建設されており、2012年8月に本格出荷を開始する(a)。空気圧で屋根を支えるエアドーム式のため、植物工場の内部には柱がなく太陽光を有効利用できる(b)。写真:三菱総合研究所