2012年6月、ゲーム業界では世界最大級の展示会「E3」が開催された。Microsoft社や任天堂、SCEといったゲーム機メーカーからは、据え置き型ゲーム機をリビングの中心に据えるための戦略が次々と発表された。一方、リビングの“王様”であるテレビは、伸張著しいクラウド・ゲームを取り込み、ゲーム機としての側面を持ち始めた。この流れは拡大し、さまざまなデジタル機器が“ゲーム機”になろうとしている。ゲーム機とスマートテレビの戦いが激化してきた。

家庭内エンターテインメントの中心を巡る争いが激化

 家庭内エンターテインメントの主役を担うべく、機能とサービスの拡充で攻勢をかけるゲーム機メーカー。それに対抗しようと、ゲーム配信サービスを取り込むテレビ・メーカー。2012年6月に開催されたゲーム業界の世界最大級の展示会「E3(Electronic Entertainment Expo)2012」は、こうした両者の戦いが、今後一層激しくなることを予感させるものだった。

 リビングにおいて、これまではテレビが「主」でゲーム機が「従」という関係だった。ゲーム機はあくまでも周辺機器という位置付けに甘んじてきた。ゲーム機メーカーは、この主従関係を崩すために、新型機の導入や新サービスの提供に力を入れる。

 一方テレビ・メーカーは、スマートテレビでクラウド型のゲーム配信サービスへの対応を始める。同サービスは、サーバーでゲームの演算処理を行い、その結果を映像としてクライアント機器に伝送するものだ。ゲーム専用機のようなハードウエアをわざわざ用意しなくても、光ファイバ通信やLTEなど、高速な通信環境が整っていれば、現行のテレビのままでゲーム専用機並みのゲームを楽しめるのが強みである。

 これから発売される新型のスマートテレビだけでなく、既存のセットトップ・ボックス(STB)のような機器でも、HD映像のゲームを楽しめるクラウド型のゲーム配信サービスが登場している。こうした新サービスの勃興により、あらゆる機器が“ゲーム機”になり得る世界が現実のものとなってきた。

『日経エレクトロニクス』2012年7月9日号より一部掲載

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