第1、2回(2012年5、6月号)では、営業キャッシュフローを生み出すには、利益を上げる以外にも資産の圧縮が重要であると述べた。中でも棚卸資産、いわゆる在庫の削減は大きな効果がある。しかも、それは生産リードタイムの短縮や顧客の需要動向を把握する営業力の強化といった仕事の質の向上にもつながり、利益の増大をもたらす。つまり、在庫削減の取り組みは、経営体質の向上を図る活動として極めて有効な方法なのである。
この在庫削減を推進する上での具体的活動の基本となるのが、「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」だ(表)。今回は、その経営的な意味と推進方法のポイントについて解説する。
今さら5S? と思う読者も多いかもしれない。どこの工場でも推進されており、ものづくりに関わる人ならば、仮に自身で実践したことはなくても、何らかの形で目や耳にしているはずだ。その推進を否定する人はいないだろうが、5Sに対する認識は「工場は当然きれいな方がよい」という程度で、経営的な意味を理解していない技術者や管理者は案外多い。
5Sの整理・整頓・清掃・清潔・しつけの中でも、在庫削減という点で特に重要となるのが「整理」「整頓」である。まず、この2つについて、それぞれ経営的な意味を詳しく考えてみよう。
〔以下、日経ものづくり2012年7月号に掲載〕
ジェムコ日本経営 取締役