廃熱として捨てられていたエネルギを回収し、活用しようという取り組みの1つに、熱エネルギ(温度差)を音波へと変換する熱音響機関がある。可動部がないため、装置などのコストが安く済むという利点があるが、従来は稼働温度の高さや効率向上の難しさが課題だった。

 そんな中、東海大学工学部動力機械工学科助教の長谷川真也氏を中心とする研究グループは、約300℃の熱源を用いつつも、「現状の熱電変換素子の2 倍以上」(長谷川氏)という18%のエネルギ変換効率を達成した。従来の熱音響機関が500~700℃で動作するのに比べて使える熱源が広がり、工場に多い100~300℃の廃熱の利用が見込める。

 東海大学の研究グループが試作した実験装置では、さらに低温の150℃の熱源を使い、常温を-40℃に冷却できる(図)。

〔以下、日経ものづくり2012年7月号に掲載〕

図●実験装置の構成と動作プロセス
図●実験装置の構成と動作プロセス
2つのループを接続したような配管(内径40mm)の内部には1MPaでヘリウムガスが封入されている。原動機(左のループ)の蓄熱器で両端の温度差が一定値を超えるとヘリウムガスが不安定になり、音波が発生する。原動機のユニットが3つあるので、熱源が低温でも音波が増幅される。音波は配管内を通って冷凍機(右のループ)へと伝わり、そこの蓄熱器で温度差を生成し、相対的に片方の熱交換器の温度が下がる。