3次元(3D)データを短時間、かつ低コストで実物の立体モデルとして得られる3Dプリンタ。価格と機能の高さは比例するのが常だが、低価格機を導入したユーザーがより高い機能を求めるようになってきたことに対応して、100万円台からの低価格帯のエントリー機種で高機能化が進んでいる。主な3Dプリンタメーカーが投入した新製品から、その傾向を見てみよう。

低価格でも高い精度

 丸紅情報システムズ(本社東京)が2012年6月20日に発売した樹脂溶融型3Dプリンタ「Mojo 3DPrinter」(米Stratasys社)は、本体価格が128万円(税別)とお手ごろなのに、従来の中位機種と同等の精度を持つ。Stratasys社製3次元プリンタで最も低価格だった「uPrint SE」よりも70万円安い上、最小積層厚さは「Dimension Elite」と同じ178μmを実現する。ただし、最大造形寸法は幅127×奥行き127×高さ127mmと、uPrint SEの幅203×奥行き152×高さ152mmよりもやや小さい。

 Mojoの特徴の1つが、造形材料のABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂やサポート材料を供給するパッケージと、それぞれを吐出するヘッド部を一体化したことにある(図)。密閉度が高まり材料が空気に触れにくくなるため、湿気を吸収するなどの材料特性の変化が小さくなって精度が向上するのだ。加えて、ノズル部に材料が詰まるといったトラブルも減る。

〔以下、日経ものづくり2012年7月号に掲載〕

図●Mojo 3D Printerの材料カートリッジ
図●Mojo 3D Printerの材料カートリッジ
材料(ワイヤ状の樹脂)を封入したパッケージとプリントヘッドをチューブで接続してある(a)。材料が空気に触れにくいため、さまざまなトラブルを防止できる。3Dプリンタの上側カバーを開け、両脇にパッケージを入れてから、チューブを固定しつつプリントヘッドを挿入するだけで準備が完了する(b)。