高齢技術者を活用するための資格制度の創設を技術同友会が提言した。経験が豊富な高齢技術者の知見を生かすためには、その経験を評価し、活用する仕組みが不可欠である。資格制度創設の中心的な役割を果たす島田博文氏は、高齢技術者が増えることは、社会全体の知見が豊富になることであり、それこそが成熟した社会の在り方であると説く。
技術同友会では、2012年4月に「知的な高齢技術者を活用するための資格創設と改革」という提言を発表しました。高齢技術者は現場での生産性向上や新しい工場の立ち上げなどの経験が豊富で、若手技術者が持っていないさまざまな貴重なノウハウを身に付けています。しかし今の日本には、この総合的な知見を社会に分かりやすく提示する方法や、それを生かす仕組みが構築されていない。そこで、私たち技術同友会が「技術経営士」という資格を創設し、その活用を推進しようと提言したのです。
なぜ、このような提言をしたかというと、近年、さまざまな問題の背景として使われる「少子高齢化」という言葉に違和感を持ったからです。少子化は確かに問題ですが、それに高齢化を組み合わせて、世の中のうまく回らないことの理由にされるのはいかがなものかと感じたのです。
そもそも人間は、古代から不老長寿を目指してきました。そういう意味で高齢化というのは本来、人間の究極の願いのはず。それなのに、国が抱えるさまざまな問題の根源のように言われる。では、そうならないようにするにはどうしたらいいだろうかという問題意識が今回の提言の根底にあります。
〔以下、日経ものづくり2012年7月号に掲載〕(聞き手は本誌記者 中山 力)
技術同友会「成熟社会の理想的仕組み創り調査委員会」委員長