製造時に印刷由来の技術を用いる「プリンテッド・エレクトロニクス」が、いよいよ実用化の時代を迎えている。既に、製品を発売するメーカーも出てきた。一方で、既存の技術や製品との競争に巻き込まれて市場から撤退するメーカーも出ている。それでも、無機の半導体を用いた日本の産業が技術、ビジネスで壁に直面する中、プリンテッド・エレクトロニクスは日本メーカーが復活するカギになる可能性を秘めている。

曲がるパネルを利用する電子書籍端末がついに市場に

 「プリンテッド・エレクトロニクス」技術やそれらに基づいて製造されたデバイス群が、いよいよ実用段階に入ってきた。同技術はフレキシブルな基板を用いたり、配線や半導体の成膜に印刷由来の塗布プロセスを用いたりする。

 この技術で製造されたフレキシブルな太陽電池は以前から製品化されていたが、最近になって電子書籍端末が販売され始めた。

 英Plastic Logic社は、TFTや制御回路に有機半導体を用いた電子書籍端末を2011年9月にロシアで発売した。ロシアWexler社は、実際に本体を手で曲げられる電子書籍端末を開発。2012年5月にロシアで発売した。これは、韓国LG Display社が樹脂基板上にTFTを形成した電子ペーパー・パネルを用いている。

 これらの製品のアピール・ポイントは、「薄型・軽量」「落としても割れない」という点。例えば、Plastic Logic社の製品は画面寸法が10.7型だが、同9.7型の米Apple社のタブレット端末「iPad」より3~4割軽い。パネル部分と筐体はすべてプラスチック製で、割れる心配は少ない。

 Wexler社の端末は6型のディスプレイを備えながら110gと携帯電話機並みに軽い。「電子書籍端末の利用者の1割は落としてパネル部分を割っている」(LG Display社)という調査結果を踏まえて、「1.5mの高さから何回落としても壊れない」(同)ことを訴える。

『日経エレクトロニクス』2012年6月25日号より一部掲載

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