雑誌 特集

「ガラパゴス」のウソ

消費の未来は日本にあり

大下 淳一、高橋 史忠=日経エレクトロニクス
2012/06/08 09:00
 

第1部<現状分析>
変化する消費スタイル
情報機器が生む潮流をつかめ

日本の生活者のライフスタイルや消費行動が、大きな変容を遂げている。携帯電話機などの情報機器が生み出した、消費スタイルのボーダーレス化だ。日本が先駆けるこの潮流は、やがて世界へと広がっていく。

さまざまなボーダーが消失

 日本の生活者の消費行動が、大きな変容を遂げつつある。背景にあるのは、生活者のコミュニケーションの変化だ。キーワードは消費スタイルの「ボーダーレス(境界の消失)化」である。地縁や血縁、会社縁といった、かつての強固な境界から成る枠組みの存在感は薄れ、それらを基盤にしていた所有欲や消費スタイルは影を潜めた。

 ただし、ボーダー(境界)がなくなったわけではない。新しいボーダーが生まれているのだ。多種多様な縁でつながった生活者同士が、おびただしい数の小さなコミュニティーを醸成しながら、その中で消費行動を起こす。生活者の一人ひとりは多くのコミュニティーに属し、それぞれの集団の中で別々のペルソナ(仮面)で活動する。

 こうした変化を支えるのは、エレクトロニクス業界が生み出したコミュケーション・ツール。スマートフォンなどの情報通信機器や、SNSやブログなどのソーシャル・メディアである。家族や同僚、親友だけではなく、趣味を同じくする“同好の士”や、ちょっとした知り合いなどと距離を越えて多くのつながりを構築することができるようになった。

 2010年代に入り、エレクトロニクス業界の目は海外、特に成長著しい新興国に向いている。「これから出て行く市場では、日本で起きている消費の事例は役に立たない」。そう切って捨てる声も聞こえてくる。

 この数年、メディアが流布してきた「ガラパゴス化」という言葉の影響は大きいのかもしれない。日本固有の発達を遂げた携帯電話業界を揶揄するこの言葉は、少子高齢化や景気停滞など日本経済の閉塞感の中、世界から見ると奇異に見える変わった出来事を代表する言葉として使われるようになった。

 だが一方で、これから世界で起きる未来を日本が先んじて体現している、との意見が多いのも事実だ。今の日本の生活者の消費行動にこそ、実は、新興国を含む世界の生活者の心をつかむヒントが詰め込まれている。「ガラパゴス」という評価の妥当性を、見直すべき時が来た。

『日経エレクトロニクス』2012年6月11日号より一部掲載

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第2部<世界の中の日本>
草食化でぶっちぎる
優しさブランドを世界に拡散

「嘆かわしい」と思われがちな日本の若者の草食化。だが、広く地球規模で目を転じれば、日本は世界的な潮流の先頭を走っている。ものづくりとサブカルチャーに詳しい筆者が、世界における日本の生活者の位置付けを分析する。

川口 盛之助 氏
アーサー・D・リトル(ジャパン) アソシエート・ディレクター
ジェンダーレス化が進む日本

 日本男子の草食化現象については、今さら改めて説明をするまでもないだろう。男の子が憧れる人気ロボット・アニメの専属パイロットの系譜を振り返っても、軟弱化の一途だ。

 「草食系」というキーワードが出現したのは2000年代半ばのこと。その後はさらに中性的な方向へと深化と細分化が進行中だ。「飲む、打つ、買う」をせず、酒類よりカフェラテを好む「しらふ系」は分化し、今では「スイーツ男子」や「弁当男子」といった家事系の道を極める一派も登場。「スカート男子」や「メイク男子」と呼ばれる外見女装型も出現した。

 多様化の中で男性全体に共通している点が一つある。それは清潔感だ。「無骨」「バンカラ」と呼ばれた価値観はもはや遺物。実の娘たちから嫌われるダサかった団塊世代の父親の姿を見て、息子たちは「ああはなるまい」と心に刻んだのだろう。

 一方、女性側も中性化が進んでいる。といっても、男性社会で正面切って「戦う女性」を目指すような分かりやすい形は卒業しつつある。華美な“ヒラヒラ”ファッションを追求するアゲハ嬢風のギャルや、「ボーイズラブ」と呼ばれる男性同性愛の妄想漫画で萌える「腐女子系」も出現した。

 一見対極にある種族だが、男性と同様に共通点がある。それは「男性と競ったり、媚びたりしない」こと。外見は「ヒラヒラ」でも、内面的には女性社会での評価や興味の中に関心が閉じている。肩肘を張らず、何となく自然に自立する。ある意味、世界でも極めて先駆的な女性像が出現しているのが我が国なのだ。

 要は、社会全般として性の役割分担が曖昧になってきているということである。この流れは総じて「メトロセクシャル化」と呼ばれる。平和が続き、豊かになって、情報やサービス主体の都市文化が発達すると生じる世界の若年層に共通の現象だ。

 日本の若者が先端を行く、この潮流の本質を捉えること。実は、それが世界の生活者の心をつかむ第一歩になる。世界規模で変容しつつある生活者の姿を無視して製品を開発しても、多くの人々には受け入れられにくい。草食先進国の日本には、見せ方次第では世界の中でブランドを高められる好機が到来しているのだ。

『日経エレクトロニクス』2012年6月11日号より一部掲載

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第3部<製品企画>
地域から機能、性差まで
ヒット商品もボーダーレス

消費行動のボーダーレス化が進む日本の生活者たち。この変化により、ヒット商品の姿も変容しつつある。「地域」「機能」「性差」「世帯構成」、こうした境界はことごとく消え去っていく。

ヒット商品もボーダーレスに

 消費行動のボーダーレス化が進展するとき、果たしてどのような商品が生活者の心を捉えるのだろうか──。「地域」や「機能」、「性差」、「世帯構成」といったこれまでの境界がすべからく消失する中、ボーダーを越えてヒットする商品の数々。サービスから家電、食品、雑誌まで、幅広く具体例を見ていきながら、今後の製品企画に求められるものを探る。

『日経エレクトロニクス』2012年6月11日号より一部掲載

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