米国ではObama大統領の就任以来、多額の公的資金が電動車両の普及に向けて投入されてきた。だが、普及への道のりはまだまだ遠く、今後の規制強化が普及のカギを握っている。そうした中、EV普及に向けて新たな急速充電規格の標準化に米独の自動車メーカーが乗り出した。さらに、非接触充電技術に取り組む企業も急増している。2012年5月に開催された電動車両の国際シンポジウム「EVS26」で見えた米国の最新動向を報告する。

規制強化とガソリン価格が電動車両の普及のカギ

 「補助金を1万米ドルに増やす」(米Department of Energy(DOE)担当者)──。

 2012年5月6~9日に米国ロサンゼルスで開催された電動車両の国際シンポジウムである「EVS(Electric Vehicle Symposium)26」の講演会場では、DOEの発表内容に電動車両の関係者から大きな拍手が贈られた。それもそのはず。電気自動車(EV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)の購入に対する補助金の上限をこれまでの7500米ドルから1万米ドルに引き上げたからだ。予算総額は10億米ドルで、すべて利用されれば約10万台のEVやPHEVの市場導入につながることになる。

 米国では、2009年1月にBarack Obama大統領が就任して以来、電動車両への転換を政策の大きな柱の一つとしてきた。2009年に発表した景気刺激策である「ARRA:American Recovery and Reinvestment Act」では、電動車両や太陽電池、スマートグリッドなど、いわゆるグリーン・ニューディール政策に総額7872億米ドルの資金を投入することを表明している。

 このうち、14億9190万米ドル分を電動車両用の2次電池生産に投じる計画を明らかにしていた他、2011年には、「2015年までにEVやPHEVといった電動車両を100万台普及させる」として電動車両の普及に公的資金を投入した。

 だが、2011年の米国でのEVとPHEVの販売台数はそれぞれ約1万台と約8000台というのが実状だ。今後、米国で電動車両を大きく普及させるには、連邦政府や先進的とされるカリフォルニア州の規制、インセンティブの動向をはじめ、米国でのガソリン価格も大きく影響しそうだ。

『日経エレクトロニクス』2012年6月11日号より一部掲載

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