ボリュームゾーンでも技術で真っ向勝負
第1、2回(2012年4、5月号)で述べたように、技術のコモディティー化の進み具合によっては、知財戦略が全く奏功しない場合がある。逆に言うと、研究開発や特許の出願といった活動に当たっては、常に技術のコモディティー化を意識し、その知財戦略が意味をなす技術分野かどうかを見極めながら進めなくてはならない。
前回(2012年5月号)に解説したように、ある製品に関する必須特許(当該製品を生産するために必ず実施しなければならない特許)の存続期間が終了し、それらの満了した特許のみで市場の要求にかなった製品を製造できる下地が整うと、技術のコモディティー化の兆候が現れる(A時点)。その後、ある程度の開発期間を経て、実際に後発メーカーが市場要求に応じた製品を開発・製造できるようになると本格的にコモディティー化が始まる(B時点)。
前回の復習となるが、A時点は、当該分野において特許出願が開始された時点と特許出願件数が最初のピークを迎えた時点の中間時点から特許権の存続期間である20年が経過した時点と定義できる。つまり、特許情報さえ収集・分析できれば、A時点を特定することは可能である。従って、開発期間を見積もれば、技術がコモディティー化するB時点もある程度推測できることになる。
では、A時点を特定し、B時点を予測できた場合、企業はどのように対応すべきだろうか。
筆者らが現状の企業群を分析した結果、事業戦略としては、コモディティー化した技術の製品で高機能・多機能化を目指す「タイプA」、コストを下げてシェア獲得を目指す「タイプB」、新市場創出を目指す「タイプC」の3つが考えられる(表)。
〔以下、日経ものづくり2012年6月号に掲載〕
内田・鮫島法律事務所 弁護士・弁理士
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