2012年4月、大阪府茨木市にあるマンションの機械式立体駐車場で3歳の男児が死亡するという事故が発生した。事故を起こした機械は、自動車を載せるパレットが縦方向に3段積まれたユニットが一体となって上下動するタイプ。被害者の親が地下にあった自動車を出庫しようと機械を操作したところ、男児は、上昇してきたパレットとユニットを囲むフレームの間に挟まれた。

 事故の発生を受けて消費者庁と国土交通省は、同様の機械式立体駐車場の事故が発生していないか、調査を開始した。その結果、一般利用者が死亡・負傷した事故の情報が2007~2012年4月末までの間に26件寄せられていることが明らかになった(表)。この中の死亡事故4件のうち、子どもが被害を受けたのは2件だった。

 この結果を踏まえて消費者庁と国土交通省は2012年5月2日、機械式立体駐車場での事故を防止するため、操作者に対して注意喚起を行った。前述の事故事例の一部を公表すると同時に、[1]自動車を入出庫する際には、運転者以外は駐車場に入らない、[2]駐車装置を操作する際には、駐車場内に人がいないことを十分に確認する、[3]操作中は駐車装置から離れず、子どもが駐車場に近づかないように注意する、[4]駐車装置の操作ボタンを固定して押し続けた状態にすることは絶対に行わない、という利用上の注意点を公開した。

 このような注意喚起によって利用者に駐車場のリスクを伝えることはもちろん有意義だ。しかし、周知徹底には限度があるし、残留リスクの高さが利用者に明示されている状況とは言えない。機械装置側での安全対策をもっと進めることはできないのか、その現状と対策の可能性を探ってみよう。

〔以下,日経ものづくり2012年6月号に掲載〕

表●ここ5年4カ月間に発生した機械式立体駐車場での主な事故
表●ここ5年4カ月間に発生した機械式立体駐車場での主な事故