「ウチの燃料電池は、平均すると家庭で消費する電力の約7割、お湯の45~70%程度を供給できる」。2011年10月に、世界に先駆けて家庭用固体酸化物型燃料電池(SOFC)システムを発売したJX日鉱日石エネルギーの新エネルギーシステム事業本部システムインテグレート推進事業部副部長の南條敦氏はこう強調する。そして、この電力カバー率の高さが消費者の関心を集めている。電力不足が懸念される中、もし燃料電池システムによって家の消費電力の7割を自給できれば、停電が起こってもとりあえずは安心だからだ。

 もともと燃料電池は、二酸化炭素(CO2)の削減で注目された、化学反応を利用した小型発電装置。家庭に設置できることから、火力発電設備や原子力発電設備では捨てていた熱をお湯として利用できるため、高効率化が可能で、CO2排出量を減らせる。そうした特徴に加えて、東日本大震災以降、非常時の電源としてが然注目されるようになってきた。

 こうした中、2012年4月27日に家庭用SOFCシステムを発売した大阪ガス陣営は強気の見通しを明らかにした。大阪ガスが販売するSOFCシステムは、アイシン精機、京セラ、長府製作所、トヨタ自動車と共同で開発したもの(図)。燃料電池ユニットの開発と生産を担当するアイシン精機は、「2010年代中に年産20万台を目指す」と表明したのだ。

〔以下、日経ものづくり2012年6月号に掲載〕

図●SOFCシステムの構成
図●SOFCシステムの構成
基本構成はPEFCシステムと同じで、燃料電池ユニットと貯湯ユニットから構成される。大きな違いは改質器が独立しておらず、燃料電池スタックとともにホットモジュール内に組み込まれていること。アイシン精機の資料を基に本誌で作成。