携帯電話機や腕時計の筐体などの樹脂射出成形金型(以下、金型)を設計・製作しているのが、金型・成形メーカーの山形カシオ(本社山形県東根市)だ。その同社が2012年4月に本格稼働させたのが、次世代金型設計・生産システム「ハイネットモールド」である。

 ハイネットモールドは、成形品のモデリングから金型部品の加工までの作業をカバーするシステム。金型の設計・製作には人にしかできない創造的な業務と、そうではない作業的な業務があるが、ハイネットモールドではこのうちの作業的な業務を徹底して自動化することでリードタイムの短縮を図った。例えば、金型設計からNCデータ作成に至るCAD/CAM作業の約8割を自動化しており、約3年前と技術的な難易度が同じ金型であれば、設計から製作に要するリードタイムは3割短くなる。

 加えて、同システムには、金型の製品としての競争力を向上する工夫が盛り込まれている。同社はこれを武器に、競争が激化する金型業界において勝ち残りを狙う。

海外生産の増加などが影響

 山形カシオがこうしたシステムを構築したのは、日本のセットメーカーが海外生産を増加させる動きを強めていることや、韓国など海外の金型メーカーが実力を付けてきていることに危機感を抱いたからである。

 日本のセットメーカーは、近年、円高やアジア市場の拡大などから、海外生産を増加させている。しかも、海外生産の対象品目は、従来と違って汎用的な製品だけにとどまらず、先進的な製品の一部にも広がりを見せている。その代表格が、山形カシオでも金型を設計・製作しているスマートフォン(高機能携帯電話機)である。こうした先進的な製品は、旬を逃さないように的確なタイミングで市場投入しなければならない。

〔以下、日経ものづくり2012年6月号に掲載〕