HD映像を無線で飛ばす「無線HD映像伝送」の実用化が進んでいる。ケーブル接続なしで、スマートフォンの画面をテレビに表示できる。コンテンツの増収に結びつくことから携帯電話事業者の関心が高い。テレビを押しのけ、スマートフォンがリビング・ルームの「主役」になる可能性もある。広く普及する無線LANを使った有力な規格も登場している。

スマホ向けの製品が続々登場

 HD映像を無線で飛ばす「無線HD映像伝送」を使い、携帯端末とテレビを連携させる動きが、ここにきて相次いでいる。例えば、米Apple社は2011年10月に実施したiOS5.0へのアップデートで、iPhoneやiPadの映像/音声をApple TV経由でテレビに出力する「AirPlay ミラーリング」の機能を追加した。台湾HTC社はスマートフォンに、中国Lenovo社はタブレット端末に同様の機能を搭載するなど、Android陣営の動きも本格化している。日本では、2011年11月にソフトバンクBBがスマートフォンをテレビに無線接続するアダプタを発売した。ノート・パソコンとテレビを無線LANで接続する独自規格の「Intel Wireless Display(WiDi)」を提唱していた米Intel社も、本格普及に向け取り組みを強化している。

 家庭内の機器間で映像コンテンツをやりとりする仕組みとしては、コンテンツ伝送規格の「DLNA(digital living network alliance)」が広く普及している。スマートフォンやタブレット端末、パソコン、テレビなど多くの機器が対応済みだ。

 ただしDLNAでやり取りできるのは、機器に保存されている動画、音声、写真のファイルに限られる。例えば、スマートフォンのゲーム画面や動画共有サイトの映像などは、DLNAではテレビに表示できない。無線HD映像伝送を使うと、モバイル端末のディスプレイに表示されている映像がそのままテレビに表示できる。つまり、ゲームや動画共有サイトの映像など、あらゆるモバイル・コンテンツを大画面テレビで楽しめるようになるのだ。

『日経エレクトロニクス』2012年5月28日号より一部掲載

5月28日号を1部買う