耳軟骨に振動源を接触させる

 周囲が騒がしく、通話相手の声が聞こえない。少しでも聞こえるようにしようと、携帯電話機のスピーカー部分を強く耳に押し当てる。それでも、やはり聞こえにくい。イライラは募り、自分が話す声も次第に大きくなっていく──。

 誰もが経験したことのある状況だろう。この携帯電話機を耳に押し当てる自然な動作を、騒音環境などに強い、通話用の新しいユーザー・インタフェースとして利用する技術をロームが開発した。耳の軟骨を経由して聴覚系に音が届く「軟骨伝導」と呼ぶ現象を応用する。

 特徴は、筐体の「角」に設けた音を伝える振動部分を、耳の穴の前にある軟骨の突起「耳珠」に軽く触れるだけで聴覚系に音が伝わること。押し当てる力を強くすると音量が大きくなる。このときに電話機の音量操作は必要ない。筐体の「角」をうまく用いて耳珠で耳の穴を塞ぐようにすれば、外部雑音を遮断しながら音を聴くことも可能だ。

『日経エレクトロニクス』2012年5月28日号より一部掲載

5月28日号を1部買う