住友軽金属工業は部材の剛性を高め、軽くできるAl(アルミニウム)合金板「SMART SHEET」を開発した。どの方向に曲げようとしても剛性が高い。これを使えば同じAl合金同士で比べて、剛性支配で設計する部材の質量を半減できる。Alの平板、波板、エンボス板だけでなく、ハニカムパネルを置き換えて安くする使い方もある。

 当社は、板材に一定のパターンの凹凸を与えることによって曲げ剛性、ねじり剛性、面剛性を大幅に向上させたAl合金板「SMART SHEET(Sumitomo Multipurpose Aluminum Reinforcedand Textured SHEET)」を開発した(図1、2)。
 Alの平板は同じ曲げ剛性の鋼板の1.4倍の板厚が必要なのに対し、SMART SHEETは0.6倍で済む。密度の違いを含めて換算すると、質量はAl平板の場合、同じ曲げ剛性の鋼板の半分、SMART SHEETは1/5にできる。剛性支配で設計する部材であれば、質量を鋼板の1/5にできる。
 自動車は主に薄板でできている。薄板は曲げに対する剛性が低いという根本的な弱点があるのだが、ほかの利点があまりにも大きいため使われ続けている。
 剛性を決める断面2次モーメントは、はりの高さの3乗に比例する。その大切なはりの高さが板の厚さしかないのだから、大きな剛性は得られない。
 この問題を克服するために、平らな板に凹凸をつけて剛性を高めようという試みが続いてきた。凹凸をつけて製品の高さを増やせば、断面2次モーメントを稼げる。Alを使う限り、物性値としてのヤング率は変わらないので、断面2次モーメントを上げることだけが解決策になる。

以下、『日経Automotive Technology』2012年7月号に掲載
図1 H形状のSMART SHEET
図1 H形状のSMART SHEET
手前に突き出している場所がH形状に見える。
図2 卍形状のSMART SHEET
図2 卍形状のSMART SHEET
手前に突き出している場所が卍形状に見える。