エンジニアの視点
本田技術研究所 四輪R&Dセンター 第5技術開発室 主任研究員 山本恵一氏
建設機器メーカーを経て1985年に本田技術研究所に入社。汎用エンジンの用途開発、電気自動車開発、電気自動車用モータの研究などを担当。趣味はクルマ、モーターサイクル、自転車。

 最近驚いたことがある。一般紙やテレビで電気自動車(EV)の充電器について報道されていたことだ。しかも報道の内容は、DC(直流)急速充電器の標準化という専門的なもの。私がEVにかかわってことしで21年目を迎えるが、こんな経験は初めてだった。
 報道の中身は、日本が独自に開発し実用化を進めて来たDC急速充電器の方式が、国際標準化の中で劣勢を強いられ、この分野でもガラパゴス化の危機にあるというものであった。携帯電話など、技術的に先行しながら、国際標準化で後れをとり、市場から締め出された事例と重ねる向きも多い。
 実際にはどうなのだろうか。それを語る前に、充電器の国際標準について少し説明をしなければならない。国際標準といえば国際連合-欧州を中心に策定されるIEC(国際電気標準会議:International Electrotechnical Commission)やISO(国際標準化機構:International Organization for Standardization)の規格を指すことが多い。充電器について、日本はIEC規格を採用している。一方米国では、EV用AC(交流)普通充電器の規格は、SAE(Society of Automotive Engineers)で制定されているが、方式は日本と同じだ。

以下、『日経Automotive Technology』2012年7月号に掲載