本田技術研究所四輪R&Dセンター鈴鹿分室LPL 主任研究員の浅木泰昭氏
本田技術研究所四輪R&Dセンター鈴鹿分室LPL 主任研究員の浅木泰昭氏
ホンダの第2期F1開発、2代目「レジェンド」のV型6気筒エンジン開発、4代目「インスパイア」の気筒休止システム開発などを経て、今回ホンダの新世代軽自動車「N BOX」の開発を指揮した。

 ホンダが2011年11月に発売した軽自動車「N BOX」は、2012年4月の月間販売台数で軽自動車トップの1万6928台を記録した。ホンダの軽自動車が1位になるのは8年4カ月ぶりのことだという。ホンダを軽のトップメーカーにしたいとN BOX開発の指揮を執ってきたのが本田技術研究所四輪R&Dセンター鈴鹿分室LPLで主任研究員の浅木泰昭氏である。
 「私はマニアックにクルマが好きだったというわけではありません。もちろん嫌いではありませんでしたが、どちらかといえばメカニズムが好きだったというほうが正しいでしょう」
 ホンダを志望したのは「既存のメーカーが作れないようなクルマで成長した会社であり、時代の勢いを感じた」のが動機だという。晴れて入社したのは1981年のことであった。工場実習、販売店実習を経て、研究所で実習が始まると、「シビック」のエンジンの耐久試験を担当した。

2年目にF1エンジン開発の担当に

 「配属はエンジンテストグループでした。メカ好きだったので、エンジンをやりたいと希望したのですが、それが認められたのです」
 そして翌年の1982年にはF1エンジン開発に異動となった。
 「F1開発の志望者を募っていたので応募したら、これも通ったのです。F1はエンジンの最高峰というイメージがあったので、やってみたいと思いました。上司が知らないうちに応募したので、異動が決まったときには真っ赤な顔をして怒られましたよ。エンジンテストグループから1人いなくなってしまったわけですから」
 ところが、いざ異動してみると、担当者は先輩と浅木の二人だけだった。

以下、『日経Automotive Technology』2012年7月号に掲載