日産自動車はFR(前部エンジン・後輪駆動)の高級セダン「シーマ」を全面改良し、2012年5月21日に発売した。ハイブリッド車のみを設定し、販売目標台数は年間1000台。すべて日本向け。栃木工場で生産する。販売価格は735万~840万円。

 今回の全面改良で5代目となる。4代目のシーマは2001年から北米と日本で販売していたが、リーマンショック以降に北米で高級車市場が急激に落ち込んだことから販売台数が伸びず、2010年8月末に生産を打ち切った。
 5代目はそれからわずか1年9カ月後の発売となった。生産を中止した当時は「次期型を開発する計画はなかった」(日産インフィニティ事業本部商品戦略・企画部チーフ・プロダクト・スペシャリストの笹岡正吾氏)というが、それをすぐに翻した格好だ。
 生産中止の判断は主に北米の販売不振に基づいたが、北米ではなく日本だけを見れば「多くはないが極めて優良な顧客ばかり」(笹岡氏)であることに気付いた。シーマの顧客は主に富裕層で、多くは複数の車両を所有している。このためシーマの購入が、ほかの日産車の購入につながる可能性は高いとみる。その優良な顧客を「むざむざとほかのメーカーのクルマに乗り換えられるわけにはいかない」(同氏)というわけだ。
 乗り換えを防ぐからには、開発を急がねばならない。生産中止から時間がたつほど乗り換える率は高くなる。日産は開発期間を短くするため、FRセダン「フーガハイブリッド」のハイブリッドシステムをほぼそのまま流用した(表)。「ソフトウエアを少し調整した程度で、ハードウエアは全く同じ」(笹岡氏)という。

以下、『日経Automotive Technology』2012年7月号に掲載
表 シーマとフーガハイブリッドの主な諸元
表 シーマとフーガハイブリッドの主な諸元