カメラを使った衝突防止システムといえば、富士重工業の「EyeSight」が代表例。認識率を高めるためステレオカメラを使うのが特徴だ。しかし、最近はより低コストな単眼カメラを使うケースが増えてきた。専用カメラを装着する後付け製品、スマートフォンのアプリケーションなどである。自動ブレーキには対応できないが、衝突防止システムの選択肢は一気に広がってきた。

 富士重工業が2010年に「レガシィ」に搭載した第2世代の衝突検知・自動ブレーキシステム「EyeSight」。“ぶつからないクルマ”としてCMでも有名になった同技術は、車両や歩行者をステレオカメラで検知し、警告した後に実際にクルマを止める機能まで実現する。現在レガシィに加えて新型「インプレッサ」にも装着しているが、2012年2、3月の実績ではレガシィでの装着率が90%、インプレッサでも40%程度に達している。
 最近多く発生している歩行者を巻き込む事故や、車線を逸脱して障害物にぶつかる事故は、こうした衝突防止システムを装備していれば被害を軽減できる。
 これまで自動でブレーキをかける衝突防止システムでは、高速まで対応するミリ波レーダや、低速域を得意とするレーザレーダが使われることが多い。しかし、車両との一体開発が必要で装着車種が限られており、価格も特にミリ波レーダの場合は高価になりがちだった。
 一方、カメラを使う場合はシステムを安くしやすく、車両に後付けする製品も開発できる。悪天候や雪道などで使うことは難しいものの、危険を警告するシステムを手軽に構築できる。
 カメラを使ったシステムは図のように、カメラの種類とブレーキ制御の有無によって大別できる。自動車メーカーのオプションとして装着する場合、車両を検知して追従走行するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)や、車両に追突しそうになるとブレーキをかけるといった高度な機能を実現できる。富士重工がカメラだけでこうした機能を実現しているほか、ミリ波レーダとの組み合わせでは、トヨタ自動車、Volvo社に例がある。
 一方、単眼カメラで衝突警告だけに機能を絞ったのがドイツBMW社だ。新型「1シリーズ」でオプションとしたシステムは、警告するだけの簡単なシステムだ。

以下、『日経Automotive Technology』2012年7月号に掲載
図 カメラを使った衝突防止システムの分類
図 カメラを使った衝突防止システムの分類
単眼カメラを使って衝突を警告するシステムのバリエーションが増えている。