シャープとの提携後、初めて郭台銘氏が狙いと展望をメディアに語った。本誌3度目の独占インタビューである。(聞き手は大槻 智洋=本誌特約記者、台北科技市場研究)

(写真:加藤 康)

郭氏 まず私からシャープとの提携に関して説明しても、よいでしょうか。

 私たちは友達の立場でシャープと提携しています。先日参加したシャープの経営会議では、40分ほど講演し「投資家やビジネス・パートナーというよりむしろ、友達の立場で一緒に仕事をし、一緒に苦境を乗り越えたい」と伝えました。

 日本人には保守的、あるいは閉鎖的な側面があります。台湾はさまざまな民族が集まって来た移民の地域ですが、日本は違う。だから、外来の人を警戒するのでしょう。軍事力によって、江戸幕府は鎖国を止めさせられたという歴史もありましたね。

 私はそれを踏まえて、シャープの幹部や中間管理職の方々と、より多くコミュニケーションを図り、改革を加速させます。Foxconnの立場は、大型液晶パネルを製造する堺工場の運営会社における持ち株比率にも表れています。シャープと私の持ち株比率は同じです。堺工場運営会社の価値を等しく認めているからです。

外来の私は価値が分かる

 「シャープは間違った投資をした」「堺工場はガンなので取り除くべきだ」という人がいます。しかし、私はそう思わない。堺工場は液晶産業の重要なマイルストーンです。なぜなら、世界で初めて第10世代(約2.9m×3.1m)の大型ガラス基板を投入できる製造ラインを稼働させたからです。堺工場運営会社の株を譲渡されたことは、大変に光栄なことです。

 私たちは投資前に周到に調査しました。製造装置は100%、ニコンなどの日本メーカー製でした。堺工場には、これまでの日本の蓄積があります。だから、色合いや液晶分子の反応速度などにおいて第一級の60~80型品を造れる。セル製造ラインにおける自動化は私たちの予想以上でしたし、省エネルギー化の水準が高く環境負荷が低いことも確認できた。

『日経エレクトロニクス』2012年5月14日号より一部掲載

5月14日号を1部買う