2012年5~8月号では「射出成形金型入門」をお届けする予定です。樹脂(プラスチック)製成形品の大量生産手段である射出成形に使う金型について、設計、製作、成形などの業務を円滑に進める上で役立つ基礎知識を、金型加工技術と、樹脂材料技術の両面から紹介していきます。

発展経緯を温ねて金型の基本を知る

 現代のプラスチック(樹脂)製品は、耐熱性や強度の向上により、非常に広い範囲に適用されるようになった。成形技術も、例えば型締め力6300tf(63MN)といった超大型成形機、射出容量1cm3のマイクロ成形機、200個以上の超多数個取りホットランナ金型といった多様なアイデアが商業化されている。樹脂材料の面でも、スーパー・エンジニアリング・プラスチックの登場で、耐熱温度領域は300℃を超えて400℃にまで到達し、応用範囲を広げている。

 これらの樹脂部品を成形する金型の技術革新も、特殊鋼の開発、機械工作技術の開発、表面処理技術の実用化、熱処理技術の発明といった周辺技術の進歩によって達成されてきた。これまでの金型技術の発展は、樹脂材料、成形機、周辺技術の相互の技術開発が有機的に寄与した結果といえよう。こうした金型の進歩は、射出成形の高度化に大きく貢献している。

〔以下、日経ものづくり2012年5月号に掲載〕

小松道男(こまつ・みちお)
小松技術士事務所
1993年小松技術士事務所を設立。射出成形や金型の開発、ポリ乳酸射出成形事業化などに関わる。技術士(機械部門)、日本合成樹脂技術協会理事・特別会員。仏Rhone-Alpes州クラスター親善大使。

松岡甫篁(まつおか・としたか)
松岡技術研究所
日立製作所、セコ・ツールズ・ジャパン、GEスーパーアブレイシブなどを経て1987年松岡技術研究所を設立。切削加工技術、工具開発、金型生産技術などで活躍。技術士(機械部門)、工学博士(東京大学)。