前回は、行動観察とは、「観察で得た事実を製品開発などに役立てるために体系化した定性リサーチ手法である」とお話ししました。今回は、その中核部分である「観かた」について取り上げます。「観かた」を身に付けることは、製品や生産設備の開発や設計、製造現場の改善のヒントになることが多く、皆さんの日常の仕事にも直接、役立つと思います。
皆さんは普段物事を見るとき、どのように見ていますか? 例えば書籍を読むときは、文字に集中して意識的に内容を読み取ります。しかし、ふと「今日はこの後、何をしようかな」などと考えていると、目では活字を追いながらも頭には内容が全く入ってこない、なんてことがあるのではないでしょうか。
背景や理由も解釈
あるいは街を歩いているとき、行き交う人々の表情やしぐさを細かく覚えていますか? 私の場合は、とんでもなく変わったことをしている人や風変わりな服装をしている人などには意識的に目を向けることがありますが、通常はたった今すれ違った人でも顔はおろか男性だったか女性だったかすら覚えていません。
これらは、一般的な「見る」という行為の例です。
〔以下、日経ものづくり2012年5月号に掲載〕
エルネット 行動観察推進部長