ステップアップは、技術者や管理者が基礎力を養ったり新たな視点を導入したりするのに役立つコラムです。2012年6月号までは、ユーザーニーズをつかむ手法の1つである行動観察を解説する「潜在ニーズを見抜く 行動観察を始めよう」をお届けします。

 前回は、行動観察とは、「観察で得た事実を製品開発などに役立てるために体系化した定性リサーチ手法である」とお話ししました。今回は、その中核部分である「観かた」について取り上げます。「観かた」を身に付けることは、製品や生産設備の開発や設計、製造現場の改善のヒントになることが多く、皆さんの日常の仕事にも直接、役立つと思います。

 皆さんは普段物事を見るとき、どのように見ていますか? 例えば書籍を読むときは、文字に集中して意識的に内容を読み取ります。しかし、ふと「今日はこの後、何をしようかな」などと考えていると、目では活字を追いながらも頭には内容が全く入ってこない、なんてことがあるのではないでしょうか。

背景や理由も解釈

 あるいは街を歩いているとき、行き交う人々の表情やしぐさを細かく覚えていますか? 私の場合は、とんでもなく変わったことをしている人や風変わりな服装をしている人などには意識的に目を向けることがありますが、通常はたった今すれ違った人でも顔はおろか男性だったか女性だったかすら覚えていません。

 これらは、一般的な「見る」という行為の例です。

〔以下、日経ものづくり2012年5月号に掲載〕

越野孝史(こしの・たかふみ)
エルネット 行動観察推進部長
1983年、立教大学経済学部卒業。大日本印刷、ドゥ・ハウス取締役などを経て、2006年から、大阪ガスのグループ会社で、行動観察を用いたコンサルティングなどを手掛けるエルネットに在籍。現在、エルネットではビジネス企画部長兼行動観察推進部長、行動観察の体系化を促進する大阪ガス行動観察研究所では主席研究員を務める。