青銅器以来3000年の歴史を持つも、昨今は「3K職場」などと呼ばれ、大手メーカーが次々と切り捨てた鋳造。斜陽産業と揶やゆ揄されるこの業界に、独自の技術を引っさげて新風を吹き込むメーカーがある。コイワイだ。そんな同社には、仕事の依頼が次々と舞い込む。斜陽産業で、この日本で、なぜ同社に…。

写真:栗原克巳

 私たちは今、新しい工法として「積層鋳造」の普及に努めています。積層造形法であるラピッド・プロトタイピング(RP)を利用し、マスター型を造らずに3次元CADデータから直接砂型を製造し、そこにアルミニウム合金や鋳鉄などの溶湯を流し込んで鋳物を成形する工法です。高精度で複雑形状にも対応できますし、何よりRPのスピードが魅力です。

 実際、あるお客様では、従来1.5~2カ月かかっていたアルミ合金製4気筒シリンダブロックの試作鋳物造りが、積層鋳造では3週間で完成しました。これを機にそのお客様では、その後「試作1カ月」がスタンダードになったほどです。

 このように、積層鋳造は品質・精度と同時にスピードが求められる今の時代に非常に合った工法と考えています。市場でも、こうした点が評価され、2011年度には月次50点以上の新規受注をいただきました。
〔以下、日経ものづくり2012年5月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 荻原博之)

小岩井 修二(こいわい・しゅうじ)
コイワイ 専務取締役
1957年生まれ。1975年普通科高校卒、1977年コイワイ入社、1989年から専務取締役に。1998年から積層鋳造に携わる。趣味はモータースポーツで、座右の銘は「今日のスペシャルは明日のスタンダード」。