イタリアのFiatグループは2011年に米Chrysler社を連結対象に加え、両社合計で400万台以上を販売した。車両を双方のブランドで売るだけでなく、プラットフォームの共用化も始まっている。欧州市場の低迷の中で同社が採るマーケティング戦略、技術戦略を探った。

 2012年3月に開催されたジュネーブモーターショーで、多くの新車を発表したのがFiatグループだ。「Fiat」ブランドでは、小型車「500」のプラットフォームをベースとし、5ドアハッチバックとした「500L」(図)を発表、ドイツBMW社「MINI」ブランドのようにラインアップを拡大する方向だ。
 さらにスポーツカーの「Ferrari」ブランドでも、排気量6266ccのV型12気筒エンジンを搭載し、最高出力が419kW(740PS)に達する「F12 Berlinetta」を登場させた。
 FiatグループはFiat、「Alfa Romeo」、Ferrari、「Maserati」、「Lancia」など多くのブランドを抱え、傘下には動力系部品のFiat Powertrain社、電装品のMagneti Marelli社など有力部品メーカーがあり、2011年の売上高が596億ユーロ(1ユーロ109円換算で6兆5000億円)に達する巨大グループ。ドイツVolkswagenグループに属するイタリアLamborghini社を除けば、ほぼイタリアの自動車産業そのものといってよい。
 今回は、経済危機に揺れる欧州で同グループがどのような戦略を採るのか、CEO(最高経営責任者)のSergio Marchionne氏へのインタビューなどから明らかにする。

以下、『日経Automotive Technology』2012年5月号に掲載
図 Fiatブランドの「500L」
図 Fiatブランドの「500L」
「500」のプラットフォームをベースとし、5ドア5人乗りとした。欧州での発売は2012年第4四半期、セルビアで生産する。