東日本大震災から1年がたった。東北で被災した自動車部品メーカーは、着実に前へと歩みつつある。それを後押しするのがトヨタ自動車だ。岩手県で生産するハイブリッド車「アクア」の販売が好調。加えて、今後は東北の生産拠点を拡充する方針だ。東北の部品メーカーから大きな期待が集まっている。

 「震災が起きてから2011年6月ごろまでの売上高はほぼ半減。どうなるかと思ったが、アクアのおかげでなんとか持ち直してきた」――。宮城県登米市に本社と工場を構える松下塗装で営業企画部長の佐々木達郎氏は、一息ついたとばかりにこう話す。
 同社はアクアに使うプレス部品の塗装を手掛けている(図)。トヨタと取引する豊田鉄工からアクアの部品を受け取り、それに防錆塗料や耐熱塗料を塗って同社に戻す。
 松下塗装の工場は震災で倒壊した。それを2011年10月末に新しく建て直し、同年12月に始まったアクアの生産に間に合わせた。佐々木氏は「2億円以上の投資になる。当社の年間の売上高と同じくらいで、とても大きな決断だった」と振り返る。
 アクアは2011年12月26日に国内で発売された。トヨタの子会社である関東自動車工業の岩手工場で組み立てている。2012年1月末時点の受注台数は約12万台に達し、トヨタは増産する方針を示している。その“アクア効果”もあり、セントラル自動車を含むトヨタグループ全体が2012年に東北地方で生産する車両台数は、前年比4割増の50万台規模に増えそうだ。

以下、『日経Automotive Technology』2012年5月号に掲載
図 「アクア」のおかげでフル稼働
図 「アクア」のおかげでフル稼働
宮城県登米市の松下塗装。プレス部品の塗装を手掛ける。(a)被災した工場を約半年で建て直した。(b、c)アクアのカウルアウタ。ボンネットの取り付け部付近に使う。