車載電子システムの機能安全規格「ISO26262」が2011年11月に正式発行したのを機に、日本の自動車業界で、対応しようという機運が盛り上がっている。すでに欧州の完成車メーカーは、部品メーカーへ仕様書でISO26262への対応を正式に要求し始めているほか、日本の完成車メーカーの対応要求も始まった。規格の記述があいまいなため、完成車メーカー、部品メーカーとも手探りしながら対応への方策を練っている。

 2005年に策定作業が始まって以来、6年の歳月をかけて2011年11月に車載システムの機能安全規格「ISO26262」が正式に発行した。すでに完成車メーカーから部品メーカーへの対応要求は、正式発行を待たずに始まっている。
 「欧州の完成車メーカーは2013年に生産が始まる新型車の一部の車載電子システムでISO26262への対応を始めるほか、国内の完成車メーカーも2014年以降に生産が始まる新規の電子システムから対応を始める─」。デンソー電子プラットフォーム開発部長の後藤正博氏はこう語る。同社の場合2005年からISO26262の初期調査を始め、2007年から全社プロジェクトとして対応するための共通基盤を構築する活動を進めてきた。

本質安全から機能安全へ

 こうした、部品メーカー各社の具体的な活動は後ほど詳しく解説するとして、まずISO26262の内容について簡単に解説しておこう。
 「機能安全」という言葉は分かりにくいが、「本質安全」と対比される言葉として使われている。機械・装置が人間や環境に危害を及ぼす原因そのものを低減、あるいは除去することを示す「本質安全」に対して、「機能安全」では、原因そのものを取り除くのではなく、安全を確保する機能を導入することによって、危害を許容できるレベルにまで下げることを指す。

以下、『日経Automotive Technology』2012年5月号に掲載