電波と光の中間的な周波数領域にある電磁波「テラヘルツ波」の研究開発が、エレクトロニクス技術(電波含む)と光技術の両側から進んでいる。エレクトロニクス技術側からは、ミリ波の技術が実用化段階を迎えたことで、次の開発対象としてテラヘルツ波が浮上してきた。一方、光側の技術もこれまで単素子だった撮像素子のアレイ化が進み、光源出力も急激に増大するなど、大きく進展している。これらによって、伝送速度が数十G~100Gビット/秒の無線データ伝送や、セキュリティー/医療用途、ウエハーなどの品質検査、さらには食品検査用機器など幅広い分野での応用が期待できる状況になってきた。

未踏のテラヘルツ領域に注目が集まる

 今、「テラヘルツ波」に注目する技術者や企業が増えている。研究者レベルでは、数年前からこの「未踏の周波数/電磁波」に関わる論文発表が大幅に増えた。数十GHzまでのミリ波の技術、あるいは光や赤外線の技術がほぼ開拓されたこともあり、未開拓だったテラヘルツ波が研究開発の具体的対象になってきたからだ。

 最近になってその盛り上がりは、産業界にまで波及している。例えば、味の素もその中の一社だ。同社は食品に混入した髪の毛や昆虫などの異物を検知する手法としてテラヘルツ波に熱い視線を注ぐ。「これまで人海戦術で実施していた異物検知を自動化できるのであれば、最初はコストがかなり高くても導入を検討する」(味の素 イノベーション研究所)。

 同社は食品の安全確保に向けて、X線検査器を用いた金属片やガラス片などの検知、そしてパッケージの外部に付着した髪の毛などの有機物類は画像認識装置を用いた異物検知を自動化済みである。ところが、パッケージ内部に混入した有機物類などは、こうした機器が利用できないという。「パッケージ内の有機物類検知は我々の永遠の課題だ」(同社)。

材料の「個性」を見分ける

 テラヘルツ波は、周波数では100GHz~10THz、波長では30μm~3mmの電磁波を指す。これらの電磁波にはもともとサブミリ波と遠赤外線という名前があった。ここへきて、この領域ならではの独自の特性が注目され始め、テラヘルツ波、またはテラヘルツ領域という新しい名称が一般的になってきた。

『日経エレクトロニクス』2012年4月2日号より一部掲載

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