従来型のカーナビが今、再定義を求められている。きっかけはスマートフォンの台頭だ。インターネットに常時接続し、アプリケーション・ソフトウエアでどんどん機能を追加できる柔軟性には、もはや太刀打ちできない。自動車メーカーや車載機メーカーが車載情報端末を進化させるべく急ピッチで動き始めている。

すべての車両からCAN情報の収集を目指すトヨタ自動車

 スマートフォンの台頭でカーナビ市場が大きく変わりつつある。その影響を真っ先に受けているのが、簡易型カーナビ(PND)だ。飛ぶ鳥を落とす勢いだったこれまでから一転。急激に失速している。

 スウェーデンの調査会社Berg Insight社によれば、2011年のPNDの世界での販売台数は3300万台と、2010年の3800万台から500万台も落ち込んだ。2016年には2300万台まで縮小するという。

 一方、高機能の据置型カーナビは自動車メーカーが純正品の搭載を強化しているため、今後も出荷台数の増大が見込まれている。ただし、安泰ではいられない。スマートフォンの便利さを知った消費者が閉鎖的だった自動車の情報端末にオープンな環境を求め始めたためだ。「iモード」という独自仕様で作られた国内の携帯電話機がオープンなインターネット網に常時接続できるスマートフォンに移り変わっているように、自動車の情報端末を定義し直す時期を迎えている。

 実際、「常に最新の地図で、渋滞情報などもリアルタイムで入手できるスマートフォンの方が、据置型カーナビより便利という声が消費者の間で急に増えている」(あるカーナビ・メーカー)。もはや従来型のカーナビでは、ハードウエアの性能をはじめ、インターネットへの常時接続性や柔軟性など、どれを取ってもスマートフォンに太刀打ちできない状況である。

自立化と依存型の2極に集約

 スマートフォンの台頭に対して危機感を募らせる自動車メーカーや車載機メーカーは、自動車用の情報端末を変革するために三つの戦略で挑もうとしている。

『日経エレクトロニクス』2012年2月20日号より一部掲載

2月20日号を1部買う