トルクコンバータは、自動変速機の発進デバイスとして長年使われている。最近では数値流体解析の活用により薄くても効率を維持し、さらに滑り損失を低減するためロックアップ範囲を広げた製品が増えている。マツダ向けの新型「アクセラ」にも同部品を供給するエクセディにその進化を聞いた。

 自動変速機(AT)において遊星歯車式の変速機構と組み合わせて使うことが多いトルクコンバータは、大きく分けて二つの役割がある。一つは、滑らかなトルク伝達を実現し発進デバイスとして働くこと、もう一つはトルク増幅の機能である。
 トルクコンバータは、向かい合うポンプとタービンという二つの翼の間に満たされた油が動力を伝える流体軸継ぎ手である(図)。ポンプの回転数に応じて滑らかに出力トルクが変化するため、スムースな発進が可能となる。また、ポンプの回転数が低いアイドリング状態では適度なクリープトルクが得られる。
 トルクを増幅するのは、ポンプとタービンの間にあるステータの働きだ。ステータはタービンからの流れをポンプの回転方向に向け、ポンプを回りやすくする。エンジンで駆動するトルクにこの力が加わることで、タービンの出力トルクを増幅できる。トルクコンバータの速度比(タービン回転数/ポンプ回転数)が小さいほど、トルク比は大きく、速度比が大きくなるにつれて増幅効果は減ってくる。

以下、『日経Automotive Technology』2012年3月号に掲載
図 トルクコンバータの役割
自動変速機の発進機構として使われる。ポンプ、タービンの間にステータと呼ぶ翼を配置。エンジンからポンプを回すと内部の油がかくはんされ、その力で出力軸のタービンが回る。ステータがあることでトルクの増幅効果が生まれる。油圧の切り替えによりロックアップクラッチを作動させるとエンジン回転が出力軸に直接伝わる。