台湾は経済発展を持続させるため、サービス産業やグリーンエネルギ関連産業、知財戦略に力を入れている。特に、新興スマート産業の一つとして、スマートEV(電気自動車)を重点分野に掲げており、電動バイクから始まったEV産業を4輪車までに広げ、有力なEVメーカーを育てるとともに、低炭素島「台湾」の実現を目指す。

 台湾のEV政策が具体的に動き出した。2011年後半に、台湾の裕隆汽車製EV「Luxgen EV」や日産自動車の「リーフ」を使った実証試験が各地で始まっている。また、日本のJARI(日本自動車研究所)に相当するARTC(車輌研究測試中心)は2011年10月、CHAdeMO規格の直流急速充電器や各種の普通充電器を備えた充電施設を稼働させ始めた。
 台湾は2016年までに世界でも先進的なEV社会を実現することを狙う。この目標に向かって、日本の経済産業省に相当する経済部の工業局は「Intelligent Electric Vehicle Promotion Office」を発足させ、2010年4月に「台湾EV政策」を発表した。
 同政策の総予算は3億ドル(1ドル78円換算で約234億円)で、実証試験、購入補助金、自動車産業界の改革、EVに適したインフラなどの環境整備を進める。EVの生産台数は、2016年に年間6万台を目標とし、台湾製のEV部品を使ったEVメーカーが世界でトップ10以内に入ることを目指している。
 EV産業のサプライチェーンでは、Liイオン2次電池やモータの「材料」、電池などの「部品/モジュール」、電池や電池管理システムといった「サブシステム/システム」、それらを組み合わせた「システム統合」、最終組み立てを担当する「自動車メーカー」という五つの階層に分類している。この中には、米Tesla Motor社の「Roadster」にモータを供給する富田電機、米GM社「Chevrolet Volt」に車載充電器を納める台達電子工業といった有力メーカーが存在し、こうしたメーカーを中心にサプライチェーン全体の強化を進めている(図)。

以下、『日経Automotive Technology』2012年3月号に掲載
図 台湾EV産業のサプライチェーン
台湾経済部の作成したメーカーの一覧。