スズキは、軽乗用車「アルト」を基本に、JC08モード燃費を30.2km/Lに向上させた新機種「アルト エコ」を発売した。ダイハツ工業の「ミラ イース」の30.0km/Lをわずかに上回り、ハイブリッドでないガソリン車中トップ。なお、10・15モード燃費はイースと同じ32.0km/Lだ。イースは3カ月足らずで首位から滑り落ちたことになる。

 「アルト」に積んでいた従来の標準エンジン「K6A」でなく、「MRワゴン」から搭載を始めた最新の「R06A」型エンジンを採用した。アルトの最高22.6km/L(アイドリングストップなし)から30.2km/Lに7.6km/L向上した。
 2011年1月に登場したばかりのR06Aエンジンだが、早くも改良に着手した。まずクランク軸を支える軸受のメタル幅を今までより10%狭くして接触する面積を減らし、摩擦抵抗を減らした。これは過給エンジンとの共用をあきらめ、自然吸気専用としたおかげだ。
 ピストンスカートの樹脂コーティングは、今までは均一にしていたが、波状のパターンに改めた(図)。樹脂のない部分は、ある部分より10μm低いのでシリンダに触れず、接触面積の分だけ摩擦抵抗が減る。また潤滑油は樹脂のない部分にたまる。波状なので、油は上死点では上に凸の所へ、下死点では下に凸の所へと往復し、安定した油膜を作る。
 ピストンリング3本のうちトップリング、オイルリングの2本のコーティングをCrN(窒化クロム)からDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)に変えた。特にアイドリングストップからの再始動など、油膜ができにくい状況で、摩擦抵抗を減らせる。

以下、『日経Automotive Technology』2012年3月号に掲載
図 ピストン横の樹脂コーティング
(a)がベース車、(b)がアルト エコ。黒く見えるところが樹脂コーティング。銀色に見えるところより10μm高い。