日産自動車は2011年10月、世界で初めて1.2GPa(1180MPa)級の高成形性超ハイテン材(高張力鋼板)を新日本製鉄、神戸製鋼所の両社と、それぞれ共同で開発したことを明らかにした。自動車の車体構造部材の軽量化につながる。

 日産は、2013年に発売する新型車からこの超ハイテン材を車体のセンターピラーレインフォース、サイドルーフレール、フロントルーフレールなどの車体構造部材に使い、採用を広げていく。衝突したときの特性を変えないように設計すると、車両1台当たり約15kg軽くできる。
 1.2GPaはハイテンの“空白域”だった。下からは冷間プレスできる鋼板が780MPa、980MPaと伸びてきている。上には1.5GPa、1.8GPaというHS鋼(熱間成形鋼:ホットプレス材、ホットスタンプ材など、呼び方は統一できていない)がある。
 神戸製鋼所の推定では、2011年の段階で、自動車用鋼板の生産量に占める590MPa以上の高張力鋼の比率は質量比で50%に達したという。中でも780MPa以上の量が大きく増え、2011年には20%を超えた模様だ。980MPaの鋼板も、ピラー、クロスメンバなどで次第に採用例が増えてきた。ただしそこから先には進んでいなかった。
 鉄鋼メーカーの製品ラインアップとしては1.2GPaもあるのだが、なかなか実用にならない。鉄鋼メーカーとしては、ハイテン比率を上げるために1.2GPa品を普及させたい(図)。

以下、『日経Automotive Technology』2012年3月号に掲載
図 神戸製鋼所が目指す車体のハイテン化
黄緑の部分のうちセンターピラーレインフォース、サイドルーフレール、フロントルーフレールが1.2GPa品だ。