2012年2~3月号では、2011年10月に日本プラントメンテナンス協会が主催した「からくり改善くふう展」の展示品から、生産現場で発生するさまざまな問題を解決しようと現場のアイデアで作製された、選りすぐりのからくりや治具の事例を紹介します。

かがむ作業を撲滅

 物の運搬を無人化したり、人の作業を自動化したり、人が楽に作業できるように支援したり…。からくりや治具は、製造現場で働く作業者たちを多方面からサポートするお役立ちツールだ。そうしたからくり・治具を製作する者にとって、最も簡単にニーズを発見でき、かつ大きな成果を期待できるアプローチが、作業者が既に抱えている問題、すなわち「現場の困った」に着眼することだ。今月から2回にわたり、作業者が困っていたことに着目し、その解決に成功したからくり・治具の事例を紹介する。

 1回目は、トヨタ自動車の事例を取り上げる。

テープ貼りに膨大な工数

 トヨタ自動車の田原工場の「現場の困った」は、設備や置き場の区画などのために、工場の床にテープを貼る作業に膨大な時間と労力がかかるというもの。同工場第2車体部では、このテープ貼りの作業に4人掛かりで合計560時間をかけていた。これほどの時間を要する理由は、(1)テープを貼る対象範囲が広いこと、(2)作業には同時に複数の作業者が必要になること、(3)作業者が無理な体勢を強いられるため作業に時間がかかること、の主に3つ(図)。特に(3)は、作業者にとって悩みの種だった。

 この問題を解決するために作製されたからくりが、床面テープ貼り機「カーブもぴったりピタピタテーパー」である。 このからくりのポイントは、作業者がかがまずに立ったままテープを貼れるようにした点にある。しかも、1人で作業ができる。この結果、作業時間を従来の1/10の56時間に削減できた。

〔以下、日経ものづくり2012年2月号に掲載〕

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