2012年1~4月号でお届けする「国内技術が育つ『仮想量試』」では、グローバル展開の本格化と両立する形で国内の生産技術を強化するため、これまでカイゼンなどで使われた手法や理論を体系付けるとともに、それに沿った具体的なアプローチとして「仮想量試」を提言します。

IE/OR/VE/QCをトータルに連携

 生産拠点が遠隔地にある状況で、量産試作(量試)を日本国内で実施する仮想量試は、ICT(情報通信技術)の活用だけでは実現できない。生産技術活動自体の体系化や定量化が必要である。従来の「現場での擦り合わせ」主導の活動だけでは、グローバル展開時の問題の抽出や解決へのアプローチに限界がある。

 これまでにも、生産技術に関わる理論や枠組みとして多くの「管理技術」が開発され、さまざまな局面で利用されてきた。最も生産現場に定着してきたのは、1890年代に開発されたIE(Industrial Engineering)であろう。1900年代の半ばまでには、OR(Operations Research)、VE(Value Engineering)、QC(Quality Control)、人間工学、行動科学などが開発された。これらは時代の趨勢に合わせて発展し、これらを基にしてトヨタ生産方式やTOC(Theoryof Constraints)、シックスシグマ(Six Sigma)など多くのものが生まれている。

 しかし、これらは特定の問題に対しては有効であっても、生産技術全体を俯瞰したときの課題の解決にはどれを用いたらよいか明確にできないという問題がある。

〔以下、日経ものづくり2012年2月号に掲載〕

中村昌弘(なかむら・まさひろ)
レクサー・リサーチ 代表取締役社長
大阪大学大学院工学研究科生産科学専攻博士課程修了、工学博士。小松製作所生産技術研究所で、知能化ロボットや空間理解などの技術研究開発・製品化に携った後、出身地の鳥取県でレクサー・リサーチを設立。ヒトの認知、状況理解や創造活動を支援・加速する観点で対話型バーチャル・リアリティ技術やヒューマン・インタフェース技術の研究開発を手掛け、さらに仮想量試システム「GP4」シリーズを開発した。