30GHzを超える測定帯域を備えるハイエンド・オシロスコープ。高速シリアル通信や高周波無線の利用拡大などによる需要の高まりと、急成長する中国・インド市場に対応するべく、大手各社の開発競争が始まった。ミッドレンジ品は測定性能だけでは売れない時代に突入。新規企業の参入や新コンセプトの製品登場など、変化の激しい市場の最新動向を探った。

30GHz超に対応するリアルタイム・オシロスコープが続々登場

 シェア首位の奪取を狙い、先行して製品を投入した2位の米Agilent Technologies社。それを首位の米Tektronix社が迎え撃ち、3位の米LeCroy社は巻き返しを図る──。30GHzを超える測定帯域を備える超高性能なデジタル・オシロスコープ(いわゆるハイエンド・オシロスコープ)の市場で激しい開発競争が繰り広げられている。Agilent社とTektronix社、LeCroy社が相次いで新製品を投入した。

 オシロスコープは、リアルタイム・オシロスコープとサンプリング・オシロスコープに大別できる。ハイエンド領域ではこれまで、広い周波数帯域を測定できるサンプリング・オシロスコープが主流だった。だが、特定の波形の一部を繰り返し抽出し、それらを組み合わせて元の波形を再現する仕組みのため、データ測定に時間がかかるという課題があった。

 この点が、最近になって大きな問題になりつつある。多くのデジタル機器において、製品の開発サイクルの短縮化や、製品開発における他部門との連携などのため、設計に多くの時間をかけられなくなっている。「技術者はとにかく時間がない。このため、設計やデバッグにかかる時間を削減できることが、広帯域のオシロスコープにも強く求められるようになった」(テクトロニクス マーケティング部 シニア・マーケティング・マネージャーの大石弘幸氏)という。

周波数帯域は30GHz超へ

 設計開発の効率化が求められるようになるにつれ、存在感を高めているのがリアルタイム・オシロスコープである。その名の通り、測定結果を即時に表示するものだ。取得した信号波形表示の更新だけでなく、信号の詳細情報や、間欠的現象などもリアルタイムに表示できる。

『日経エレクトロニクス』2012年1月23日号より一部掲載

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